BWTの原理と音質

 

■  ベンディング・ウェイヴ(横波)・トランスデューサー  ■

- 有害なパルス性トランジェント·ノイズ(過渡雑音)の発生しない革新的スピーカー・ユニット -



MST = BWT

マンガー・サウンド・トランスデューサー(MST)は、

ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー(BWT)を

理想的に具現化した画期的な音響(スピーカー)ユニットです




I. マンガー研究所(現マンガー・オーディオ)について

 

 - 1960年:故ヨーゼフ・W. ・マンガー(Josef W. Manger ※理論音響学)により設立

 - 1967年:ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー(BWT)の研究開始

       (ミュージシャンやバンドの要求から研究が始まった)

 - 1970~80年:2つの研究プロジェクトに対してドイツ連邦政府より約2億円の研究資金援助

 - 1974年:ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー(BWT)の基礎が完成

 - 1983年:ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー(BWT)に関する研究成果に対し、

       ドイツ連邦バイルン州政府より表彰を受ける

 - 1984年:ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー(BWT)が最終的に完成


・業務内容:『聴覚と音響』に関する諸研究、ならびに高精度ベンディング・ウェイヴ・

        トランスデューサー(BWT)の製造・販売

・所 在 地 :ドイツ連邦バイルン州フランケン郡メルリッヒシュタット市

・現 代 表 :ダニエラ・マンガー(Daniela Manger ※音響学)

故 ヨーゼフ・W. ・マンガー(Josef W. Manger)

II. ベンディング・ウェイヴ(横波)トランスデューサーの原理


マンガー研究所における20年にわたる「聴覚と音響』に関する研究により、現在の電気音響トランスデューサー(ラウドスピーカー)の最大の問題点が、トランジェント・レスポンス(過渡応答)の悪さと、それに起因するパルス性トランジェントノイズ(過渡雑音)の発生にある事が明らかにされた:


1. 人間の聴覚の働き

人間を含めた動物の五感は、満ち満ちる危険の中で生き延びるためのアラーム・システム(警告器官)として発達した。聴覚もその例外ではない。

何億年という生物の進化の歴史において、危険をできるだけ早期に察知するために、かすかなパルス性音波(例えば、枯れ葉を踏んだ時のカサッという音や、小枝が折れるパキッという音など)に対して、人間を含めた動物は大変敏感である。すなわち、耳から脳までの神経経路において、この種のパルス信号は約30倍にも増幅されるのである。この初期パルス音により、危険の方向・距離をいち早く察知し、反射的に逃避行動に移りながら、後からの持続信号により、その危険の種類や内容をゆっくりと分析確認する。


人間の聴覚では、10msec(1/100 秒)以下の持続音は覚醒意識では感知できないし(神経反射の領域)、正確な音の判断のためには、80msec以上のシグナルの持続が必要である。

しかしながら、この持続時間を音圧は不変のままどんどん短縮していっても、主観的な音の大きさ(音圧感)は低下するが、音源の定位(方向感と距離感)はほとんど悪化しない。

最終的には、明確に音として認識するのではなく、『ハッとする』というような、無意識、または潜在意識(従って、心理的には根が深い!)における危機感となる。そして人間は、0.01msec(10μsec = 50kHz の半波に相当)のパルス信号まで、危機感としてではあるが、認識できる能力を備えているのである。


2. パルス性トランジェント・ノイズ

音楽は過渡性シグナルの集合体であり、ある特定の周波数のサイン波が持続する事はまれである。全帯域コンデンサー型などごく一部を除く従来のオーディオ用スピーカー・システムは、トランジェント・レスポンス(過渡応答)が悪いため、ソースに含まれない 0.1〜 20msec 程度持続する、刺激的で不愉快なパルス性トランジェント・ノイズ(過渡雑音)を盛大に発生する結果となる。

これは、従来のスピーカーが、マッス(重り)とスプリング(バネ)とで構成される振動系を、磁気回路 + ヴォイスコイルという電磁モーターで駆動するシステムに理論的には等価である事に由来する。スプリングは、エネルギーの蓄積・放出を繰り返し、入カソースにはない振動系のオーバー・スイング(オーバー・シュート)を起こすからである。

位相/時間特性が悪くてもトランジェント・レスポンスを悪化させるので、マルチウェイのスピーカー・システム(クロスオーヴァー周波数付近だけではなく、全帯域での位相時間不整合が問題!)は、ほとんど例外なく、トランジェント・レスポンスが悪く、その結果、有害なパルス性トランジェント・ノイズを盛大に発生させてしまう。

ステップ入力に対する理想的なレスポンスと一般的なマルチウェイ・スピーカー・システムのレスポンス

(遅延とオーバー・スイングとはすべてパルス性トランジェント・ノイズとなる)


これは、我々リスナーに危険が迫っているという、無意識または潜在意識へ働きかける心理的警告を絶えず発しているようなもので、聴き疲れして長時間聴いていられない原因となったり、アンプ側で高域をカットしたくなる原因となる。(もちろん、刺激的な音を好む場合は別であるが…!)また、このパルス性トランジェント・ノイズは音源の定位を認知させるので、リスナーにスピーカーの存在を主張する事になる。


3. トランジェント・レスポンスの測定

上記の事実は、一般的なスピーカー特性の測定法、つまり定常状態(一定不変、または、ゆっくりと変動するサイン波)の入力に対する出力音圧レベルの周波数特性(f特)や、同様の定常サイン波入力時における第二次・第三次高調波歪率の周波数特性の測定からでは、うかがい知る事ができないものである。

この正しい評価のためには、トランジェント・レスポンスの正確な測定が不可欠である。

具体的には、ステップ・レスポンス(段階応答:入力が0から1へジャンプし持続する)とシングル・インパルス・レスポンス(単一インパルス応答:入力が0から1ヘジャンプし、すぐに0へ戻る)とが、一般的であろう。

電力入力

理想的な音響出力

ステップ・レスポンス

4. 蟻牛(かぎゅう、カタツムリ殻)とベンディング・ウェイヴ

人間の聴覚では、空気の粗密波(縦波)である音波を鼓膜で受け、鼓室小骨を経て、リンパ液で満たされた鍋牛へ伝えられる。この時、従来の縦波から膜(鯛牛内の基底膜)の振動である横波へ変換される。この蛸牛内において、音響シグナルは物理的な振動からさらに細毛神経細胞への刺激として電気化学的パルスへ信号変換される。基底膜の幅と剛性とは一律ではなく、膜上の音速とエネルギー・ロスとは周波数に依存する。高域は高速で減衰も大きいため、基底膜の入り口近くのみを瞬時に振動させ、周波数が低下するほど時間的に遅れ、しかも奥まで到達する。この細毛神経細胞が鯛牛の入り口近くから次第に脱落していくので、年齢と共に高域が聞こえ難くなるのである。

この基底膜の横波伝搬波を、ベンディング・ウェイヴ(Bending Wave)と言う。


5. ベンディング・ウェイヴ原理のスピーカーへの応用

このベンディング・ウェイヴ(横波)原理を電気音響トランスデューサーへ応用(特許取得済み)すると、単一振動板で、トランジェント・レスポンス(過渡応答)の非常に良い、従って、有害なパルス性トランジェント・ノイズ(過渡雑音)を原理的に発生しないスピーカー・ユニットの実現が可能となる。


6. 周波数によって音響放射面積が変動

軽く柔らかい膜のような振動板の片側を速く細かく振動させる(高い周波数)と、その近辺のみが揺れ、逆に、ゆっくり大きく振助させる(低い周波数)と、波は膜の先の方まで伝わっていく。

つまり、単一ダイアフラム(振動板)でありながら、周波数により振動面積が変動する事に等しい。すなわち、高い周波数に対しては小さなダイアフラム面積(従って振動系の等価質量も小さい)、低い周波数に対しては逆に大きなダイアフラム面積を持つ事になるので、フルレンジ・スピーカー・ユニットとして、振動板の物理的条件が理想に近い。

このリング状のダイアフラム動作がトランジェント・レスポンス(過渡応答)に対して理想的である事は、ヨーロッパにおける音響理論の権威である、ベルリン大学教授ヘックル博士(Prof. Dr. M. Heckl)の理論計算によっても検証されている。

Ⅲ. ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサーの設計


※一般的コーン・スピーカー※

現在一般的なダイナミック型コーン・スピーカー(磁気ギャップ内に設置したヴォイスコイルにシグナル電流を流し、これを駆動力として円錐状振動板を動かすムービングコイル型)では、磁束密度の向上など磁気回路の強化と共に、振動板の軽量化と高剛性化とが、最大のテーマである。

ヴォイスコイルに加えられた力により、振動板全面を分割振動させる事なく、一様に助かすピストン・モーションを理想とするからである。

このため、フルレンジ・ユニットでは振動板の質量が増し、高域特性の劣化から必然的にトランジェント・レスポンスは良くない。


コーン型では通常、ワイドレンジ化などの特性改善を目指して、帯城を複数のユニットに分割するマルチ・ウェイ方式が一般的であるが、クロスオーバー周波数付近だけではなく全帯域における位相/時間不整合が事実上不可避なため、やはりトランジェント・レスポンスは良くない。


※その他の方式※

リボン型、コンデンサー型など、このダイナミック型コーン・スピーカーの欠陥を補うものも存在するが、リボン型ではフルレンジ化が困難で、マルチ・ウェイ化に伴う位相/時間不整合から、結局、同様のトランジェント・レスポンス特性の悪化を招く。

一方コンデンサー型にはこの欠陥はなく、単一ダイアフラム(振動膜)によるフルレンジ化が可能である。故に、トランジェント・レスポンス特性(特に立ち上がり)は良く、従って、パルス性トランジェント・ノイズも発生し難い。

しかし、全面同位相駆動による、指向性の悪化と、その構造上大きな振幅が取れないため、最大出力音圧レベルが制限されるという弱点がある。


※ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー(BWT)※

1. スタジオ·モニター用として開発

ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー(BWT)は、絶えず変動する楽音という入力信号に対して正確に反応しながら、同時に、ピーク音圧の十分な余裕(ヘッド・マージン)が要求される、録音スタジオ用のモニター・スピーカーとして開発された。

レーザー・ドップラー法による振動面の測定結果

(左上10kHz ~ 右下100Hz)

ベンディング·ウェイヴ·トランスデューサー (BWT)の断面図

2. ベンディング.ウェイヴ·トランスデューサーの特徴

- 応答が速い

10倍の入力信号への追従(立上がり、立下がり共)に 0.013msec(13μsec)しか必要としないため、人間聴覚の反射認識限界 0.01msec(10μsec) に相当し、もしソースに情報が含まれているなら、微妙な気配や定位感など、聴覚能力をフルに活用できる

- 有害なパルス性トランジェント・ノイズが発生しない

エネルギーの蓄積・放出を繰り返すスプリング(バネ)が原理的に存在しないので、振動系のオーバースイング・が起こらない

- 以上よりトランジェント・レスポンス特性は理想的

- 全帯域にわたる良好な位相/時間特性(特に200Hz ~10kHz は位相ずれがない

シングル・インパルス・レスポンス

ステップ・レスポンス

位相特性とインピーダンス特性

- ワイド・レンジ(広周波数帯域):80Hz ~35kHz(8オクターブ以上)

- 良好な指向特性

周波数特性

指向特性:0、5、10、15、20、25

- 高感度/高能率:90dB/W/m(91dB/W/m:4Ωバージョン)

ネオジウム・マグネットを使用した強力な磁気回路と磁気ギャップ内に理想的に配置されたダブル・ヴォイスコイル、さらには軽量で柔軟なダイアフラムの採用により、高感度高能率を実現

  1. -最大出力音圧レベルが十分に高い:連続110dB/m、ピーク116dB/m


3. 軽量で柔軟な特殊ダイアフラム(振動板)

- 円形平面ダイアフラムを持ち、その面積は8インチユニット(直径約20cm)に相当

- このディメンションは、人間の聴覚内内耳にある蝸牛内(カタツムリ殻)の基底膜の長さにより決められた

- ダイアフラムは、コーン型の求める高剛性化とは逆で、軽量柔軟なタイプ

- 特殊強化プラスティック製の両面スキン材と内部コア材からなる3層サンドイッチ構造

- そのダイアフラムの剛性を、人間聴覚の蝸牛内(カタツムリ殻)の基底膜と同様の特別なアルゴリズムに則って中心から外周へ向かって変化させるダイアフラム内の音速とエネルギー・ロスとは周波数に依存して変化する

- 高域は高速で減衰も大きく、逆に、低域は低速で低減衰

- 高城はダイアフラムの中心部のみより音響放射され、中域から低域と周波数が下がるに従い、放射領域が外周部へ広がる

- 振動は、あたかも、静かな水面に小石を落とした時の波紋のように同心円状に広がる

- ダイアフラムに波紋状に伝わる振動は、中心部と周辺エッジ部とで反射を繰り返し、悪影響を及ぼす可能性があるので、不要反射をコントロールするため、高域用をダイアフラム中心部裏面に点状に低域用を周辺エッジ部表裏両面に星形(定在波が乗り難いように9角)に設置

- ベンディング・ウェイヴ理論の正確な実現のために、ダイアフラムを初めとした主要部品の製造には10μm (10ミクロン、1/100mm)オーダーの精度が要求される


4. ダイナミック型駆動方式

ダイアフラム(振動板)の駆動方式は、現在一般的なコーン・タイプと同様のダイナミック型(ムービングコイル型):ネオジウムを使用した強力な磁気回路内に、直径70mmのメカニカル・シリーズ・ダブル・ヴォイスコイルを採用


5. メカニカル・シリーズ・ダブル・ヴォイスコイル

メカニカル・シリーズ・ダブル・ヴォイスコイル(機械的直列2巻線式):

磁気ギャップ内の両端にそれぞれヴォイスコイルを設置(ダブル・ヴォイスコイル:機械的にはシリーズ/直列、電気的にはパラレル/並列)し、ダイアフラムがいかなる位置にあっても、両ヴォイスコイルの総和と磁気回路とは一定の関係を維持する。すなわち、両ヴォイスコイルが補償し合い、一方のヴォイスコイルが磁気ギャップから外れようとすると、他方が磁気ギャップ内へ入ってくるのである。こうして、高感度/高能率を維持しながら、磁気ギャップ内の磁束分布の非直線性をキャンセルできる。

これにより、最大振幅 ±3.5mm取れるので、パワーリニアリティーが大変良く、従って、最大音圧レベルが高い:連続110dB/m、ピーク116dB/m

6. 最低共振周波数(fo:エフゼロ)

最良の特性・音質のバランスを考慮し、最低共振周波数(fo)は 75Hz に設定:

150Hz以上は理想的なベンディング・ウェイヴ動作をし、それ以下は次第にピストン・モーションへ移行する。

位相整合の比較的容易な超低域は、サブウーファーに任せる。その際、BWTの素晴らしいトランジェント・レスポンス(過渡応答)に整合するように特別に制御された、アクティブ・タイプがベストである。なぜなら、このサブウーファーのコントロールが正しくないと、せっかくのBWTの優秀な過渡応答性を生かせないからである。



IV. ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサーの音質


1. スピーカー・システムの存在が消える

パルス性トランジェント・ノイズ(過渡雑音)は、人間の聴覚に音源の定位(方向と距離)を認識させる。このノイズの発生しないベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー(BWT)では、それ故に、発音源(スピーカー・システム)を認知できず、目を閉じるとスピーカー・システムの存在が消える。存在するのは音楽だけである。


2. ゆったりと音楽へ没入する事ができる

パルス性雑音は、我々の意識下に絶えず危険警告を与え続けるが、これが存在しないので、リスナーはゆったりと音楽へ没入する事ができる。

デジタル録音が刺激的と言われた一因が、実は、従来のスピーカー·システムから発生するこのトランジェント・ノイズである。


3. 小音量でも明瞭で、大音量でもうるさくない

有害なパルス性トランジェント・ノイズに楽音が妨げられないので、小音量でも音楽情報が明瞭に聴きとれ、逆に音量を上げても、余計な付帯音がないのでうるさくならない。また、パワー・リニアリティーが良いので、アタックの伸びや抜けも大変良い。


4. 楽器や歌い手が本来の密度や立体感を取り戻す

楽器や歌などが元々持っているパルス性トランジェント・シグナル(定位を決定する過渡信号)は、スピーカー・システムからのノイズにマスクされる事なくそのまま再現されるので、楽器や歌い手の定位(方向と距離)を損なわず、密度濃い音像が三次元音場の中に立体的に現出する。


5. 音場空間はあくまで透明で広い

もし、LPやCDなど音楽ソースに演奏時の音場がうまく録音されているなら、ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー(BWT)による再生の音場空間はあくまで透明で広い。


6. 入カソースを正確に再現し、音楽の美しさをありのまま伝える

パルス性トランジェント・ノイズは、スピーカー・システム自身の持つ、いわゆる『味わい・色付け・メリハリ感・刺激・雰囲気・…』と言った性格にも貢献(!?)するが、ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー(BWT)に、これらを求める事はできない。

色付けが少ない事を新たな色付けと表現する人がいるかもしれないが…

このパルス性ノイズが存在しない事とトランジェント・レスポンスの良さとが相まって、人間の聴覚にとって重要な情報である楽器などの立上がりに悪影響を与えることがない。

入カソースを正確に再現するので、音楽や現実音など入カソースの持っている美しさや醜さ、優しさや激しさをデフォルメする事なく、ありのままリスナーへ伝える。

また、ソース、アンプ、ケーブルなど接続された他の機器の特徴を明確に表現するので、モニター・スピーカーとして最適である。



V. ベンディング・ウェイヴ・トランスデューサーの現状


音質の項で述べた革新的な特徴により、ヨーロッパにおける多くの音楽家(作曲家、演奏家)やトーンマイスター、さらには音響学研究者が、このマンガー研究所の開発したベンディング・ウェイヴ・トランスデューサー(BWT)に絶大な支持を寄せ、これを手放せなくなっている。

現在スタジオ・モニターとして、ヨーロッパでは50以上のスタジオにシステム(サブウーファー、アンプを組み込んだアクティブ・システムとして)が納入されている。

※2017年9月時点